小説『花守の竜の叙情詩(リリカ)』
『花守の竜の叙情詩』淡路帆希
【日本/全3巻完結】
- ジャンル:ライトノベル
- 舞台:異世界
- 登場人外:竜 完全竜形態あり
- 出版年:2012(富士見ファンタジア文庫)
- 作品の雰囲気:シリアス あまりダークな感じはしない
- 人外×人間の恋愛要素:あり
人外好きには2巻以降が特にオススメ。世界観の作りこみもしっかりされているので、3巻まで読むといろいろ納得できることも。
あらすじ
隣国エッセウーナの侵略により王女の身分から転落したエパティーク。祖国オクトスはすでになく、囚われ、絶望の淵にあった彼女の元を訪れたのは、エッセウーナの第二王子テオバルトだった。
王位継承権争いに敗れた彼は、エパティークを連れて旅に出ることを命じられていた。そうして始まったのは、願いを叶えるという伝説の銀竜を呼び出すための旅。エパティークを生贄に捧げるための旅だった。
互いに憎しみあい、反発する二人。やがてたどり着いた旅の終点、そこには確かに伝説が息づいていて……
感想(ネタバレあり)
お気に入り度★★★★☆
1巻は互いを憎む二人が惹かれあい、愛に目覚めるまでの旅路。これはこれでもちろんロマンスとして最高なのだが、人外好きにとってはテオバルトが銀竜となった2巻からが本番だろう。
2巻は愛が通じ合った二人が種族差で引き裂かれるところからスタート。離れていても互いを思いあう二人の愛の強さから目が離せない。銀竜となったテオバルトの苦悩――銀竜という種族自体をめぐる事情も、斬新な設定が多いため飽きることがない。
3巻はテオバルトの問題が解決、しかしその代償に記憶を失ってしまったエパティーク(アマポーラ)の苦悩。愛する人のために、愛する人を忘れる。それでもなお忘れることができない思いというものは、確かにあるのだと信じさせてくれる物語だ。
花が舞っている場所にいるような、そんな優しい雰囲気が終始漂う作品でもある。挿絵がそんな叙情的な雰囲気を支えている。生贄や死などが絡んでいても、どこかシリアスやダークに染まり切らないのはそのためだろうか。