人間人外

いわゆる「人外」と呼ばれる生き物が登場する作品について

小説『花守の竜の叙情詩(リリカ)』

『花守の竜の叙情詩』淡路帆希

【日本/全3巻完結】

 

 人外好きには2巻以降が特にオススメ。世界観の作りこみもしっかりされているので、3巻まで読むといろいろ納得できることも。

 

あらすじ

 隣国エッセウーナの侵略により王女の身分から転落したエパティーク。祖国オクトスはすでになく、囚われ、絶望の淵にあった彼女の元を訪れたのは、エッセウーナの第二王子テオバルトだった。

 王位継承権争いに敗れた彼は、エパティークを連れて旅に出ることを命じられていた。そうして始まったのは、願いを叶えるという伝説の銀竜を呼び出すための旅。エパティークを生贄に捧げるための旅だった。

 互いに憎しみあい、反発する二人。やがてたどり着いた旅の終点、そこには確かに伝説が息づいていて……

感想(ネタバレあり)

 お気に入り度★★★★☆

 1巻は互いを憎む二人が惹かれあい、愛に目覚めるまでの旅路。これはこれでもちろんロマンスとして最高なのだが、人外好きにとってはテオバルトが銀竜となった2巻からが本番だろう。

 2巻は愛が通じ合った二人が種族差で引き裂かれるところからスタート。離れていても互いを思いあう二人の愛の強さから目が離せない。銀竜となったテオバルトの苦悩――銀竜という種族自体をめぐる事情も、斬新な設定が多いため飽きることがない。

 3巻はテオバルトの問題が解決、しかしその代償に記憶を失ってしまったエパティーク(アマポーラ)の苦悩。愛する人のために、愛する人を忘れる。それでもなお忘れることができない思いというものは、確かにあるのだと信じさせてくれる物語だ。

 花が舞っている場所にいるような、そんな優しい雰囲気が終始漂う作品でもある。挿絵がそんな叙情的な雰囲気を支えている。生贄や死などが絡んでいても、どこかシリアスやダークに染まり切らないのはそのためだろうか。

 人外王道ラブロマンスなら、これは絶対に外せないライトノベルだと思う。