小説『しゃばけ』シリーズ
【日本/既刊21巻】※2022/11月現在
- ジャンル:時代小説
- 登場人外:妖
- 出版年:2001年(新潮社)
- 作品の雰囲気:ほのぼの、たまにシリアス
- 人外×人間の恋愛要素:あり(主人公よりも周囲の妖たちが)
あらすじ
江戸時代、人々でごった返す町にまだまだ妖たちが息づいていた時代。
とある薬屋の身体の弱い若だんなは、彼に仕える大妖の仁吉、佐助とともに、様々な妖が関わる珍事件を今日も解決していく。
基本的に一冊で話が完結するオムニバス形式だが、若だんなの成長、などといった大筋は存在している。ミステリーとしても楽しめるし、若だんなの「のほほん」とした雰囲気、彼の左右で目を光らせる妖従者らとの関係性も魅力的な一冊。
主な関連作品
⇒コミカライズ、ドラマ、舞台
2007年、テレビドラマ化。若だんな役を演じる手越祐也さんの瑞々しい演技が庇護欲をそそる。
20周年記念で2021年にスペシャルテレビアニメも制作されている。
本編コミカライズ版以外に、萩尾望都、高橋留美子などの豪華執筆陣で描かれた特別エピソード漫画『しゃばけ漫画』(全二巻)も非常に魅力的。
感想(ネタバレあり)
お気に入り度★★★★☆
ひらがなの不思議なタイトルがまず目を引く一冊。
手に取れば、そのタイトル通りに、どこか平和で優しい妖の世界に入ることができる。
主人公若だんなは、強い力を持つ存在ではないが(一応大妖の血は引いている)、強い意志の持ち主だ。行動するときの正義がはっきりしており、気持ちが良い。
それでも、人間として多くの壁にぶつかってしまうことがある。そんな時、従者二人をはじめとする周囲の温かさに支えられ、成長していく姿はとても眩しい。
江戸時代の妖ものに共通する、あの雑踏を行き交うような空気。この作品ももちろんそれを存分に味わえる。町人、妖の生活が交差する生き生きとした描写。
キャラクターたちも非常に魅力的だが、特に従者の仁吉は誰もが一度は惚れてしまうような、イイ白澤、だろう。「あたし」という一人称を聞いたとき、日本語の多様さ・江戸時代そのものに感謝してしまった。
彼、そして佐助が若だんなを選んでいる理由や忠誠心は妖主従が好きな人にとっては堪らないはず。